リクルート就職みらい研究所の調査では2025年大卒予定者の4月1日時点の就職内定率は58.1%となった。前年同月より9.7ポイント上昇し、引き続き高い水準となっている。
内定率を地域別に見ると、関東が62.2%(前年比プラス9.2ポイント)、中部は58.3%(同6.0ポイント)、近畿が59.3%(同11.4ポイント)、その他地域が49.1%(同13.4ポイント)と、どの地域も前年同月よりも高い数値となった。また、最も高い関東と最も低いその他地域の差が前年同月は17.3ポイントだったのに対し今年度は13.1ポイントとなり、前年より地域差が縮まっている。
内定取得企業の平均社数は前年より増えている一方で、内定辞退企業の平均社数も増加しており、前年に比べ内定辞退も進み始めているといえる。同調査では、内定を取得している学生から「もっと苦労するものだと想像していたが、あっさりと決まってしまいこれでいいのかという不安も残っている」といった声も寄せられている。
新社会人になった24年卒の大学生へのアンケート調査では、就職確定先の企業について「就職活動開始前から知っていたか」を聞いている。「就職活動開始前から知っている企業だった」が43.6%と前年より上昇傾向にあるものの、「開始前には知らない企業だった」が56.4%と半分以上を占めた。
やりたい仕事、行きたい会社の軸を明確に持って動く学生は一定数いるが、当初は何がやりたいのか明確になっていなくても自分にとっての最適な一社を見つけることはできる。早い段階で周りの友人が内定を取得している状況に「やりたいことがわからない」「興味を持てる仕事がない」と焦っている学生も少なくないだろう。そこで、一つの考え方としておすすめしたいのが「得意なこと」という観点も加えて探してみることだ。
得意なこととは「他人は苦労や努力をしながらやっていることでも、自分はごく自然にできること」ともいえよう。自然な振る舞いとしてできるため、自分だけで気づくのは難しい。家族や友人など、自分をよく知る人に聞きながら、しっかり見極めていくといいだろう。
仕事とは世の中に価値提供をする側に身を置くということ。消費者目線の「やりたい」「好き」なだけでは務まらない面も多い。「得意」という視点を加えることで仕事内容や企業選びの選択肢は広がる。パフォーマンスが高まり、周りからの評価にもつながりやすいだろう。自然体でできる行動や振る舞いを生かせば、自己効力感も高まりやすくなるはずだ。
最終的な進路選択の意思決定の際には、自分にとって大事な基準とは何かを定めておくことが欠かせない。内定取得の有無にかかわらず、自分の得意なことや強みを明確にすることで、今一度、自分らしく働ける環境選びを進めていってほしい。
(リクルート就職みらい研究所所長)