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【就活のリアル転載】配属ガチャどう防ぐ 初任先の確約採用導入も  栗田貴祥(2024/5/21付 日本経済新聞 夕刊)(2024/05/28)


 リクルート就職みらい研究所の調査では2025年大卒予定者の4月1日時点の就職内定率は58.1%となった。前年同月より9.7ポイント上昇し、引き続き高い水準となっている。

 内定率を地域別に見ると、関東が62.2%(前年比プラス9.2ポイント)、中部は58.3%(同6.0ポイント)、近畿が59.3%(同11.4ポイント)、その他地域が49.1%(同13.4ポイント)と、どの地域も前年同月よりも高い数値となった。また、最も高い関東と最も低いその他地域の差が前年同月は17.3ポイントだったのに対し今年度は13.1ポイントとなり、前年より地域差が縮まっている。

 内定取得企業の平均社数は前年より増えている一方で、内定辞退企業の平均社数も増加しており、前年に比べ内定辞退も進み始めているといえる。同調査では、内定を取得している学生から「もっと苦労するものだと想像していたが、あっさりと決まってしまいこれでいいのかという不安も残っている」といった声も寄せられている。

 新社会人になった24年卒の大学生へのアンケート調査では、就職確定先の企業について「就職活動開始前から知っていたか」を聞いている。「就職活動開始前から知っている企業だった」が43.6%と前年より上昇傾向にあるものの、「開始前には知らない企業だった」が56.4%と半分以上を占めた。

 やりたい仕事、行きたい会社の軸を明確に持って動く学生は一定数いるが、当初は何がやりたいのか明確になっていなくても自分にとっての最適な一社を見つけることはできる。早い段階で周りの友人が内定を取得している状況に「やりたいことがわからない」「興味を持てる仕事がない」と焦っている学生も少なくないだろう。そこで、一つの考え方としておすすめしたいのが「得意なこと」という観点も加えて探してみることだ。

 得意なこととは「他人は苦労や努力をしながらやっていることでも、自分はごく自然にできること」ともいえよう。自然な振る舞いとしてできるため、自分だけで気づくのは難しい。家族や友人など、自分をよく知る人に聞きながら、しっかり見極めていくといいだろう。

 仕事とは世の中に価値提供をする側に身を置くということ。消費者目線の「やりたい」「好き」なだけでは務まらない面も多い。「得意」という視点を加えることで仕事内容や企業選びの選択肢は広がる。パフォーマンスが高まり、周りからの評価にもつながりやすいだろう。自然体でできる行動や振る舞いを生かせば、自己効力感も高まりやすくなるはずだ。

 最終的な進路選択の意思決定の際には、自分にとって大事な基準とは何かを定めておくことが欠かせない。内定取得の有無にかかわらず、自分の得意なことや強みを明確にすることで、今一度、自分らしく働ける環境選びを進めていってほしい。

 リクルート就職みらい研究所では、4月に新社会人になった2024年卒の大学生を対象に「入社後の配属に関する状況」調査を行った。3月卒業時点で、配属先が確定していた学生はどれくらいいたのか。調査結果を見ていこう。

 24年卒の就職確定者のうち、3月卒業時点で「入社後の配属先が確定している」のは46.9%。「確定していない」のは53.1%と半数を超え、その割合は23年卒と大きく変わっていない。入社を決める前までに配属先の確定を希望する学生の割合は38.7%と約4割である一方、実際にその時期までに配属先が確定している学生の割合は20.3%。希望と実態の間には差があることが読み取れる。

 こうした学生の志向に対応しようと、企業はさまざまな採用の在り方や配属先の確定を進め「配属ガチャ」を防ぐ工夫を凝らしている。その一つが、入社後最初の配属部署、配属地を確定する「初任配属確約採用」といえるものだ。

 入社するまでどこに配属されるか分からない不確実性は取り除きたい。一方で入社後、初任配属先で一定期間働いたあとは、自分のキャリアパス意向に沿って異動(ジョブローテーション)などの選択肢は用意されていたほうがいい。

 その両方の思いをくんだ「初任配属確約」という在り方は、学生の多様化する価値観にマッチしたものかもしれない。社内の人材流動性が高いことは、学生時代には見えていなかった思いがけない強みを引き出し、キャリアの可能性を広げることにもつながるからだ。

 24年卒の大学生・大学院生に「働きたい組織の特徴」を尋ねた調査では「様々な仕事を短期間で次々に経験する」働き方か「特定領域の仕事を長期間、継続的に担当する」働き方か、どちらがより当てはまるかを聞いている。大学生の回答は前者は41.3%、後者は58.7%であり、特定の仕事を継続したいという意向が高いものの、4割はジョブローテーション型の働き方を望んでいることがわかる。

 複数の仕事を経験しながら適性を見いだしていく、従来の総合職・メンバーシップ型採用の良さと、特定の仕事を任されるジョブ型採用の考え方。どちらも選べるように制度を整えることは、異なる価値観の人材を広く採用できることにつながり、学生側の納得度も高まっていくだろう。

 一人ひとりがキャリアオーナーシップを持ち、自らのキャリアを自分で選択できる状態は、働く個人の充実感を高めていく。企業側はそれぞれ異なるキャリア観に向き合い、ポテンシャルを最大に引き出せるように対話を重ね、成長を支援していく。そのような職場の在り方を追求する企業が、個人にとってより魅力的で、選ばれる存在になっていくのではないだろうか。

(リクルート就職みらい研究所所長)


     

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