政府や大学は就活に関して3月に企業広報解禁、6月に選考解禁、10月に内定解禁を要請しているが、企業はどこ吹く風で採用活動は早期化している。
リクルート就職みらい研究所の「就職プロセス調査」では、2025年卒採用で2月までに半数以上の学生が面接を、3割超の学生が最終面接を受けている。そして、4月1日時点で既に6割の学生が内定をもらっている。私の見る限り、大企業の内定出しの山は5月で、多くの大企業は実質的に採用活動を終了する勢いだ。
こういう数字を見ると「6月以降はもう後半戦」といわれても仕方ない。内定のない学生は焦っていることだろう。しかし、実はこの「後半戦」はある種の企業にとって主戦場となっており、まだ諦めないでほしい。というのも、大手企業に残念ながら縁がなかった学生たちは人材の宝庫と思われているのだ。
一般論だが、大手企業の初期選考は粗いといわれている。大手は今でも100倍を超える倍率で完全な買い手市場だ。そのため、大手は学生の素養がその企業に「フィットしないから」でなく、「分からなければ」落とす。
しかし、面接やエントリーシート(ES)で自分を表現するのがうまい人が良い人ではない。それとこれは別の話だ。採用選考が苦手でも優秀な人材は山ほどいる。分かっている企業は大手企業でうまくいかなかった人を求めてこれから採用活動を本格化させるのだ。
具体例を挙げると、OfferBoxなどのスカウトメディアへの登録者もこの時期に再度増える。企業は「最近登録してきた学生」は「大手企業ばかり受けて残念ながら縁がなかった優秀な人材」ではないかと仮定する。だから今から登録しても遅くはない。むしろ狙い撃ちしてくれるかもしれないのだ。
また大手を第1志望としていた学生が大手から内定をもらえば、併願していた企業を辞退することになり席が空く。大手の競合になるくらいだから、席の空いた企業は魅力的な企業だろう。大手や有名企業に内定をもらった友人がいるのであれば、逆にどこを辞退したのかを聞いてみるとよい。後半戦はどうしても知名度は低い企業ばかりになる中、そこで名前の出る企業は面白い企業である可能性は高く、受けてみる価値はある。
日本企業の99%以上は中小企業だ。学生は大手企業に目が向きがちだが、エクセレントな中小企業はいくらでもある。特に、大手企業残念組を狙ったり、大手企業と競合したりする上昇志向の強い採用をする中小企業は、人材のレベルが高く、人を大切にする企業かもしれない。
後半戦は大企業が採用活動をやめて市場からいなくなる。知名度の低い中小企業のどこを受けてよいかわからないと悩む学生が多いが、このような探し方をしてはどうだろうか。
(人材研究所代表)