知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】人見知りが多すぎる 短所の書き方にはご用心 上田晶美(2024/6/4日本経済新聞 夕刊)(2024/06/11)


 「自分のことを人見知りだと思う人は?」と先月、私が講義を担当する大学2校で尋ねたところ、ほぼ全員が手を挙げた。女子大でも共学校でも同様だった。エントリーシート(ES)を見ていると、短所の欄によくこれを書く人がいて気になっていたのだが、全員とは驚きである。はやりなのだろうか。

 「人見知り」という言葉を辞書で引くと「子どもなどが知らない人を見て恥ずかしがったり嫌がったりして泣いたりすること」とある。本来は幼児期に使われる言葉だ。「人見知り期」というのもあるし、幼いころは誰もが極端に警戒心が強い時期があるが、大学生になってもそれを引きずっているのか。

 就活だからといって自分の性格を偽る必要はないが、ESでの表現となると少し考えたい。私も笑いをとるために「消極的な性格なので」と言ってみることはある。それは私の性格が正反対であることをよく知っている人の中で使うジョークである。時と場所を選んで使っている。

 そもそもESでなぜ短所を聞くのか。仕事は長所を生かしてするもので、短所を聞いても仕事にはつながらない。各社にはそんな欄を設けないでほしいと思うくらいだ。おそらく、長所と短所はセットだからという軽い考えなのだろう。

 ただそこにあまりにもネガティブな要素である「人見知り」などと書き込んでしまうと、わなにハマったようになってしまう。果たして人見知りな人が会社で円滑なコミュニケーションをとり、チームワークが築けるのかと考え始めると、疑念が生じてしまうというものだ。他にも「人づきあいが苦手」とか「友達が少ない」などは、表現を考えた方がよいと思われる。

 採用側には面接は苦手な人かなと思われそうだ。しかし、そうやってハードルを下げてもらおうとの手は通じない。なぜならESで疑問があると面接に呼ばれないかもしれないというリスクの方が大きいからだ。門前払いになってしまいかねない。

 長所の欄はさておき、短所の書き方は難しいので心して書いてほしい。例えば「エンジンがかかりにくいが、本気になると長続きする」とか、「一見明るく見えないが、実は友だちが多い」など短所をカバーした書き方がよいのではないか。

 ESを添削していると、その他にも気になるのは「逆接」の使い方だ。私も「○○するが」と助詞の「が」をよく使う。この「が」の後には逆の話がくるはずだが、順接に使う学生をよく見受ける。「アルバイトは販売でしたが、サークルは軽音楽部でした」というのは少し国語的におかしい。

 ESは中身が重要で「てにをは」の問題ではないにしろ、スムーズに読めるものがよい。しかも短所の書き方にはくれぐれも気を付けてほしい。性格を変える必要はないけれども。
 
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

前のページに戻る