知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】長期化する就活 一律的なルール見直しを  栗田貴祥(2024/7/2付 日本経済新聞 夕刊)(2024/07/09)


 2025年卒予定の大学生を対象にしたリクルート就職みらい研究所の最新の「就職プロセス調査」で、6月12日時点の就職内定率は前年同月比で4.8ポイント高い84.8%だった。進路確定率は67.3%、内定辞退率は61.4%となった。

 6月1日時点の内定率も82.4%と、採用の選考解禁が6月1日になった2017年卒以降で最高となっている。選考解禁当日にもかかわらず、8割を超える学生が内定を得ているという状況は、3月1日https://kousei-jinken.or.jp/method-info/method1/96648から企業広報の解禁、6月1日から選考解禁という現行の就活ルールの形骸化を端的に表している。

 企業側は昨今の人手不足による採用意欲の高まりから、採用競争が激化する中、採用計画の達成に向けて早くから動かざるを得ない状況になっている。

 学生はその動きに呼応するかのように早くから就活準備を始めるが、早期に内定を得たとしても、大手企業が選考・内々定出しを始める6月1日以降の選考結果を見極めるまでは就活を続けることになる。皮肉なことに学業阻害を防ぐための就活ルールの存在が就活を長引かせ、学業や課外活動の制約となってしまっている側面がある。

 2024年卒の学生への調査では就活の実質的な期間は7.87カ月だった。学業や課外活動を阻害するのは「早期化」以上に「長期化」の方が影響は大きいのではないかと思われる。

 冒頭の調査で、就活を経験した学生から得たコメントには、「就活の早期化に振り回された」といった否定的なコメントがあった一方で、「就活を早く終えることができたので、卒業論文に集中することができた」という捉え方もあった。

 学生は学業はもちろんのこと、課外活動やアルバイトなどを通じて充実した学生生活を過ごす中で、将来の仕事につながる自身の興味・関心や強み、自分らしさの解像度を上げていく。その過程で現在学んでいることに意義を見出し、より主体的な学びへとつなげていく。

 そのような好循環につながる機会や環境をしっかり確保できるよう就活のあり方を考えていくことは、就職後のミスマッチを防ぐためにも非常に重要だ。

 自身で納得のいく意思決定ができるタイミングは学生によって異なる。納得できる「選社基準」を早々に固めることができた学生は、早い段階で内定を得て短期で就活を終えることで、その後の学生生活で就職後を意識した学びを深められる。

 一方、自身の将来ありたい姿ややりたいことがまだよく分かっていない学生は、学業や課外活動を通じ、じっくりと自分なりの「選社基準」を磨き上げていけばいい。

 いずれにせよ一律的な就活ルール一辺倒ではなく、就活の長期化が抱える問題を直視し、学生が納得できる就活のあり方について改めて議論する時期に来ているのではないだろうか。

(リクルート就職みらい研究所所長)


     

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