知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】内定先2社で迷ったら 率直に配属先を聞こう 上田晶美(2024/7/16日本経済新聞 夕刊)(2024/07/23)


 「内々定をもらった総合商社A社と広告代理店B社はどちらも志望度が高く、二者択一で迷っています」。就職活動が終盤戦になり、そんなうらやましいような相談がきた。同一業界内であれば比較もしやすいが、別業界となると仕事の内容が全く異なり、比較するのは難しい。

 とはいえ初めから一つの業界に絞って就活をスタートする学生は少なく、複数の業界で自分の適性を試しながら就活を進めるのが一般的だ。彼のように最終的に別々の業界の大手企業から内々定が出る場合もある。

 決断に後悔がないようにするため、私がアドバイスするのは一旦、初心に帰ってみること。就活を始めた約1年前のことを振り返ってみる。当初の自分の就活の軸はなんだったのか。どんな仕事がしてみたいと思い、就活に臨んだのか。

 例えば「プライベート重視」なのか「自らが成長し続けること」なのか。出発点を再確認したうえで、その後の約1年間にわたる活動で視野が広がり、変化したこと、しなかったこと、その経緯など、これだけは譲れないという自分の価値観とその変化を顧みてほしい。

次 に入社後の将来について、働く自分の姿を具体的に描けるかどうか。まずは入社1年後、研修期間を経て、配属先についてはどのくらい希望がかなえられるのか。その3~5年後は?

 10年後はどうだろうか。大手企業では仕事が多岐にわたるため、配属が違えば全く別の企業に入ったくらいの差がありそうだ。途中で軌道修正はできるのか。商社であれば、資源開発か食品事業かではあまりに分野が違うし、担当する国や地域でもかなり違いが出るだろう。

 これが大手企業ならではの配属リスクである。配属先については比較的希望を聞いてもらえるようにはなってきているが、まだまだ配属ギャップを感じる人は多く、転職希望に結びついていく要因ともなる。

 キャリタス就活が3月に発表した入社1年目の社会人対象の満足度調査を見ると、入社前と様々なギャップがあったという人は5割以上に上っている。特に実際の仕事内容がもっとも多い。配属の満足度は技術系・専門スペシャリスト系を除くと、希望通りだった人は5割程度。勤務地についてはかなり希望がかなえられているようで、「やや満足」も入れると8割以上となっているのは安心感がある。

 就社ではなく就職という時代になり、一生その会社にいるという意識の20代は少数派になった。つまり転職も含め自らのキャリアを自律的に形成していくのならば、社命で動くのではなく自分で決定していくことが必要になる。少なくとも入社後の配属先は希望がかなえられるかどうかという基準は大きくなるだろう。そこの不安については会社側に率直に聞いてみて、ギャップを少なくできそうな会社を選んでほしい。
 
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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