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【就活のリアル転載】早期離職防ぐには 配属理由の丁寧な説明を  栗田貴祥(2024/7/23付 日本経済新聞 夕刊)(2024/07/30)


 新入社員の早期離職につながる、入社後のミスマッチ。その要因の一つとして挙げられることが多いのが配属先への不満や懸念だ。では、企業は新入社員の配属に関してどのような考えを持っているのだろう。

 リクルート就職みらい研究所では2月に、新卒採用に関与している人事部門担当者812人に対して「新入社員の入社後の配属に関する調査」を実施した。その結果からは、個人のキャリアに向き合う各企業の姿勢に差があることが読み取れる。

 まず、新入社員の配属先伝達時期の割合は、内定承諾前までが34.6%、内定承諾後~入社前が24.4%、入社時以降が41.1%という結果になった。昨今、自身の配属先に対する不安から、内定承諾前に配属先の確約を求める学生が増える中で、実際は約4割の学生が入社するまで配属先を伝えられていないことが分かる。

 内定承諾前の確約について課題などを聞いたところ「ひとつの職種や勤務地に希望が集中した場合の対応」「各部署との連携や望まれる人材の提案などのすり合わせが困難」など企業内での調整の難しさが挙がった。

 また、「希望通りではないとお断りされないかと心配になる」「確約がかえってモチベーション低下につながる者もいる」といった声もあった。確約内容が希望と異なる場合に内定辞退につながるのではないか。そう懸念する採用担当者の本音が読み取れる。

 こうした回答からは、内定承諾前の配属先の確約を、「学生が希望する部署への配属」ではなく、「企業の人員充足観点での配属」と想定している企業が一定数あることがうかがえる。

 新入社員の配属に関する制度については、従来のやり方を見直す必要性を感じている企業は51.8%と半数以上にのぼり、その理由として離職率の高さを懸念する声が多く寄せられた。ただ、その中で、やり方の見直しができている企業は26.4%にとどまり、思い通りに改善が進んでいない現状がある。

 もちろん、現実問題として、すべての学生の希望通りに配属することは難しいところもあるだろう。大切なのは、必ずしも希望をかなえることだけではなく「あなたのキャリアにとって、この配属先で経験を積むことにこんな意味がある」「こんなキャリアにつながる可能性がある」など、本人のキャリア形成の観点で、「なぜあなたにこの仕事を担ってほしいのか」を丁寧に伝えることだ。

 対話もないままに、企業側の都合だけで決めようというスタンスでは、企業と個人が対等な関係とはいえず、組織への信頼も高まらない。労働力不足が深刻化していく中、個人のキャリア構築を企業がどう支援していくのか。一人ひとりに寄り添う姿勢を示すことが、これからの選ばれる企業を作っていくといえるだろう。

(リクルート就職みらい研究所所長)


     

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