「就活に役立つ経験として何をすればよいですか?」と聞かれることがよくあるが、私はもし可能であれば「留学」と即答する。費用負担が重く誰もが行けるものではないが、「旅」は見聞を広め、それなりの苦労もする。留学となると長期になり、英語など外国語やその他の学びが加わる。この先の人生においてかけがえのない経験であり、しかも直近の就活に即役立つことが多いと感じる。
毎年、就活講座に出向いている大学のある学部は、約1年間のオーストラリア留学がプログラムに入っており、帰国後の間もない時期に、エントリーシートや面接について丸1日かけて個別指導している。留学から帰ったばかりの学生たちの自信に満ちた態度に感心することしきりだ。明らかに積極性が向上している。
留学先では黙っていては食事も出て来ないし、どのバスに乗れば大学に行けるのか、どこが自分の教室なのか、ネットで調べても簡単にはわからない。掲示を探したり人に聞いたりを英語でこなして、何もかも自分で探索することの連続だ。不自由な生活を自分で切り拓き、なんとかなじんで大学に通ったことがエントリーシートの下書きからもうかがえる。
留学エピソードの内容で多いものの一つは、ホームステイ先での家族との交流や壁についてだ。英語で意思を伝えることの壁を乗り越え、習慣の違いを許容し、生活していく困難さを書いている。
中にはホームステイ先で差別的な態度をとられ、どうにも合わなかったため交渉してホームを変えてもらった人もいる。一方で、小さなお子さんがいると割と早く溶け込めたなど。ただし、これら生活に関するエピソードは就活で書き込むこととしてはあまり向かない。
二つ目は、大学での学生仲間との交流や、学業そのものの取り組みである。これらはエントリーシートに書く内容にふさわしい。語学学校だけでなく、学部の勉強そのものに日本ではない苦労や広がりがある。
例えば、Aくんは地域創生について、スポーツビジネスを通して学んできている。地元サッカーチームの運営実態をケーススタディーとし、日本でもスポーツビジネスに取り組みたいそうだ。
また、Bさんは将来ウエディングビジネスに就きたいと思っており、現地の花屋でアルバイトをした。海外ウエディングや、オーストラリア流の花束の作り方を見てきている。
そんな直接仕事に結びつく学びばかりではないにせよ、Cくんはアルバイトを探すため英文のレジュメを作成し、10軒近く歩いて交渉したそうだ。それに比べれば日本の就活は、前半はネットで進むため容易に思えるに違いない。このまま失敗を恐れず、挑戦する姿勢で将来につなげてほしい。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/