知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】親はどう支える 個性を尊重、対話深めよう 栗田貴祥(2024/9/3付 日本経済新聞 夕刊)(2024/09/10)


 夏季のインターンシップ体験などを通じて、早くも「就職活動が始まった」と感じている大学3年生は少なくないだろう。現在の4年生は8割以上がインターンシップやオープン・カンパニーなどのキャリア形成支援プログラムに参加するなど、就活の在り方は以前と様変わりしている。就活を見守る親は自分たちの世代との違いを理解しながら、子どもとの対話を重ねる必要がある。

 リクルートワークス研究所による調査では、2025年大卒・院修了予定者に対する求人倍率は1.75倍と、学生に追い風が吹いている昨今。しかし就活は人気企業に多くの学生の応募が集まり、「大量応募・大量不合格」となる構造が長く変わらない。どうしても「落ちる」という苦しい体験を重ねることになり、就活が長引けば長引くほど自己肯定感を失っていく学生が一定数生まれてしまう。

 そこで大事になるのが周囲の支えであり、もっとも身近な社会人の先輩である親の存在は大きい。24年の大卒・院修了者に「卒業後の進路を考える上で影響を与えたもの」を聞いた弊社の調査では「親」が35.7%を占めた。「友人」が30.3%、「大学・学校の先生」が21.5%であることからも、親の存在の大きさがわかる。コロナ禍を機にリモートワークが浸透し、親の働く様子が垣間見えるようになったことで、仕事の内容や働き方について興味を持った学生もいるだろう。

 学生に対して、親との関わりについて「よかったこと」を聞いた最新の調査では「個性を尊重し、自分の活動を肯定してくれた」が41.6%、「普段と同じ態度、見守り役、聞き役に徹してくれた」が39.9%と上位を占めた。

 一方、「嫌だったこと」は「特にない」が67%で圧倒的なトップに。親のサポートを、基本的にはポジティブに捉えている様子が読み取れる。ただ、「自分の進路選択に否定的な反応をされた」「周りの優秀な知り合いと比較された」「自分の意見や価値観を押し付けられた」といったコメントも寄せられている。就活期間は気持ちの浮き沈みが大きくなりがちなだけに、自分の活動や思いを肯定し、応援してくれる姿勢が精神的な支えになっていることがわかる。

 内定が出る時期が年々早期化している中、「効率的にタイパよく就活を終えたい」と内定獲得をゴールと捉えて動く学生もいるだろう。しかし、就活は自分らしく豊かな人生を歩むための最初の職選びの活動であり、自分にとって大事な「選社基準」を磨く時間である。

 親の側も貴重な機会ととらえ、「働くって何のため?」「どんな人生を送りたい?」と、ワーク・キャリアだけでなくライフ・キャリアまで見据えた議論をしてみる。そんな対話を重ねることも、親ができるサポートの一つになるかもしれない。

(リクルート就職みらい研究所所長)


     

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