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【就活のリアル転載】狙い目のOB・OG訪問 「人がしないこと」で打開を 曽和利光(2024/9/10付 日本経済新聞 夕刊)(2024/09/17)


 昔は就職活動といえばOB・OG訪問というくらい、多くの学生が希望の業界や会社の先輩たちを訪問していた。しかし、リクルート就職みらい研究所の「就職白書2024」によれば、現在、OB・OG訪問をしているのは約15%にすぎない。

 就職ナビや採用ホームページ、スカウトサイト(学生が自分の情報を登録すると企業からスカウトメールが来るサービス)など、OB・OG訪問より楽に企業の情報が手に入るようになった。売り手市場ということなら、面倒なOB・OG訪問をしなくても当然ともいえる。

 ところが、学生にとって一見楽に見える売り手市場には落とし穴がある。学生からの応募が少ないために、企業側からアプローチするしかなく、リファラル採用(社員や内定者からの紹介による採用)やスカウトサイトが利用されるようになった。

 しかし、これらの手法は、企業が会いたいと思う学生にしか連絡はいかない。有名大学の学生であれば問題ないかもしれないが、知名度の低い大学や、人気のない学部などに在籍している人は、知らないうちに対象外になっている。

 これはいわゆる「学歴差別」という悪辣なものではない。単に「全員にはスカウトを送れないので、過去に内定者の多いところをターゲットにしている」だけだ。もしも、そこでスカウトメールを送らない対象の大学でも、良い人がいればふつうに採用したいのが企業の本音だ。しかし、待っていても学生が来ないので、ある意味「適当に」ターゲットの学校を選んで、そこにスカウトメールを送っている。

 このことを嘆く必要はない。対策は簡単だからだ。冒頭で述べたOB・OG訪問をお勧めしたい。このSNS社会で、希望する企業の「中の人」を発見することはたやすい。見つければ「就活中なのですが、よろしければお話しできませんか」とメールを送る。返信がないかもしれないが、なんという負荷でもない。文面をコピペして何人かに送れば、会ってくれる人も出てくるだろう。というのも、そういう人は大変珍しいからだ。

 さらに、もしその会社がリファラル採用をしていれば、大変幸運だ。人事担当者は社員に「いい学生がいたら紹介してほしい」とお願いをしている。OB・OGが「うちに合いそう」と思えば、人事に紹介してくれるだろう。現場社員から紹介を受ければ、人事担当者は会社として必ず会おうとするだろう。

 スカウトメールが来ないとか、なかなか面接にたどり着けないとかはこうやって乗り越えることができる。私はこの単純な方法を何人もの学生にアドバイスし成果を挙げてきた。しかし、これを読み実行するのは100人に1人もいないだろう。だが、ビジネスは人がしないことをするから勝てるのだ。悩んでいる人はぜひ一度OB・OG訪問をしてみてはどうだろうか。

(人材研究所代表)



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