「何がやりたいかわからないので、就活が始められない」と大学2年生が相談してきた。実際、就活を始める段階で特に文系の学生に同様の悩みを抱える人は多いと感じる。約30年就活に関わってきた私としては、「やりたいことがわからないからこそ、就活を始めてほしい」と思うし、その最初の一歩をどう踏み出すかについてもアドバイスできる。
しかし、少し客観的な立場から見ると、大学2年生、つまり20歳前後になってもまだ自分が将来何で生計を立てるかについて深く考えられていないということは、将来自分は稼げるのか、生きていけるのかという危機感がなく、自立できない「子どもっぽさ」を感じる。
この夏、北欧に行き、現地の若者たちと交流して感じた大きな違いはまさにこの点である。スウェーデンでは、高校卒業後、何がやりたいかをじっくり1年ほど考えてから大学を選ぶ人が多い。これがギャップイヤーの存在である。
そのギャップイヤー中の一人の男性は、昨年は日本に留学し、今はストックホルムでアルバイトをしながら、どこの大学で何を専攻するかを考えているという。その兄も、ギャップイヤーを経てから大学に進んだそうだ。
ギャップイヤーは、日本の浪人生とは大きく異なる。欧米のギャップイヤーは英国から広まったといわれる。学生たちは一旦勉学を離れ、ボランティアやインターン、時には旅を経験して視野を広げ、将来自分の生きていく糧を得るために大学で学ぶべきことを決めていく。
日本の大学進学は、何を学ぶかよりも偏差値に合わせて大学を選ぶ方式が根強く残る。その中でも理系と文系ではかなり違いがある。
理系は大学に進学する際に学科を選んでから入学するので、1年生からある程度将来の仕事が見えている。一方、文系は大きな漠然とした枠で捉えられており、「経済学部なら金融関係」「法学部なら法律家」といった希望もあるが、選択肢は非常に多岐にわたる。
今どき「会社員になれればいい」とは思っていないだろう。就社よりも就職時代になったと言われているのに、それでは入学時の意識と卒業後の進路に大きな隔たりが生じてしまう。
それらを改善するため、各大学には「キャリアデザイン」という1、2年生から将来の仕事を考える講義が設置された。3年生はインターンシップの奨励や早期化も実施されている。
教育システムの違いと言えばそれまでだが、世界的に見て、日本の学生の「やりたいこと探し」の中途半端さと、学業と就活システムとの非連動にはまだまだ改善の余地が大いにあると感じる。
やりたいことがわからない人こそ、それを探すために早めに就活を始めてほしい。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/