「指示待ちの若者が多くなった気はしますが、ボランティアに来る学生は違いますね」とある大学の職員の方が言った。一緒に大学の文化イベントで映画上映会を運営した際の打ち合わせでのことだ。
この大学には学生の学内ボランティア制度があり、手を挙げた学生が大学側のイベントに協力し、ともに運営している。他大学でもオープンキャンパスなどのイベントではボランティアスタッフが活躍しており、学内ボランティアは一般的になっている。
イベントのボランティアチーフの女子学生は大変優秀かつ主体的で、感心することばかりだった。授業の合間の昼休みに話し合いに参加し、どんな宣伝方法が効果的かなど学生の立場で提案してくれた。当日の司会を務めることになると、その台本もしっかり作成してくる。
交流会の企画では、ボードにシールを貼ってアンケートを取ることを提案してくれ、目に見える手軽なやり方で大好評だった。どうして思いついたのか聞いてみたら「他大学のイベントに参加した際にやっていて、良いと思った」という。彼女は活動範囲も視野も広く、体験と併せてリサーチもしているのだ。きっとこの延長線上で就活もうまくいくことだろう。
学生の主体的活動として、最たるものが学園祭であろう。実はこの大学の学園祭の実行委員は、就活がとてもうまくいくという伝統がある。学園祭の活動で時間がない中、しっかりと一流企業の内定を取っていく。おそらく学園祭の準備活動の中で、コミュニケーション力が磨かれ、リーダーシップが付き、視野が広がるのだと考えられる。それだけでなく、主体性がポイントのひとつなのかもしれない。
私の持っている講義の中でも同様のことはあり、私がたくさんの資料を教室に持ち込み、机にどさっと置くと「先生、手伝います!」と言ってさっと前に出てくれる学生が何人かいる。そんな学生がいてくれることはとてもうれしく、誇りに思う瞬間だ。その学生たちをひいきせず平等に採点しているつもりだが、顔と名前は覚えるようになる。関係性ができてきて、相談にもよく来るようになり、就活の手伝いもできるようになる。
学生の指示待ちに悪気はない。「指示されていないことを自分からやって無駄に失敗したり、怒られたりしたくないですから」というのを聞いたことがある。失敗したくないというのが先に立つのだ。
主体的に動くことが身についていて、自分から声をかける習慣があれば、就活を始めるのはたやすいことだろう。早くたくさん失敗して、自分なりの経験則を身に付けていくために活動を始めてほしい。そもそも学生の経験に失敗などないと思う。すべては成功や成長のための経験なのだ。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/