年末が近づき、就職先が確定している2025年大卒予定者にとっては、社会人生活のスタートがより現実的になってきたのではないだろうか。
そこで気になるのが、入社後の初任配属先だろう。リクルート就職みらい研究所は「就職プロセス調査」(25年卒対象)で、配属先確定の時期を学生に聞いてみた。
すると、24年6月中旬時点で、就職予定先企業について「入社を決める前までに配属先が確定する」学生は37.3%。一方、「入社を決めた後に確定する」は43.5%で、入社を決めてから配属先が分かるケースが4割を超えている。
学生の意向を聞いてみると、「就職先を決める前に確約されている方が良い」と考えている学生が8割以上おり、24年卒と比較しても増加傾向にある。
採用の在り方が多様化し、コース別採用や職種別採用などが広がりを見せる今、学生はなぜ、配属先が確約されている方が良いと考えるのだろう。
理由の一つに、学生のキャリア形成に対する意識の高まりと、それに伴い増大するキャリアへの不安があると考えられる。キャリア形成に対する意識の高まりは不確実性に対する不安と表裏一体の関係にある。その不安を解消するために、配属先をできるだけ早く知りたいと考える傾向が強まっているのではないだろうか。
学生の中には、企業からの提案を通じて新たなキャリアの可能性を見いだしたいと考える人もいる。
学生から寄せられる声には、「自分の知らない適性を企業側が提示してくれる場合もある」「人事の目から見て(自分に)向いている仕事や部署を教えてほしい」といったものもあり、ジョブローテーションによるキャリア形成を歓迎する意見も少なくない。
では企業側はどうだろうか。新入社員の入社後の配属について聞いてみると、半分近くが「配属先の伝達時期は入社時以降」と答えていた。学生の希望と比較しても、入社以降に配属先を伝える企業は、まだまだ多いといえるだろう。
初任配属先の確約や勤務地を確約した採用など、学生の要望に応えられるような選択肢を用意する企業は増えている。
ただ、ここで本当に重要なことは、個人の希望を100%かなえなければならないということではなく、学生の多様なキャリア意向に向きあい、丁寧な対話を重ねていく姿勢だ。
学生の中には、企業側からの配属提案や、意見の擦り合わせを期待している人も少なくない。学生の適性を尊重して決めた配属先について、その背景や理由を伝え、一人ひとりに合ったキャリアを共に作り上げていく。そうした寄り添う姿勢によって、学生は安心して入社日を迎えることができるだろう。
(リクルート就職みらい研究所所長)