知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】何がしたいかわからない 企業はせかさず伴走を 栗田貴祥(2024/12/17付 日本経済新聞 夕刊)(2024/12/24)


 就職活動中の学生からよく聞かれることに「やりたいことが明確じゃないとダメですか」というものがある。2025年大卒予定者を対象に「就職活動で困っていること・悩んでいること」を聞いたリクルート就職みらい研究所の調査では、会社説明会などが本格化する直前の2月の時点でも「なりたいものが見つからない」「自分は何がしたいのかわからない」という声が複数あった。

 しかしそもそも、就活を始める前に「やりたいこと」を明確に持っている学生のほうが少ないのではないのだろうか。自分に合った業界や企業、仕事内容とは何か。自己理解を深めながら納得のいく選択肢にたどり着くプロセスが就活ともいえる。もちろん中にはやりたい仕事や求める働き方を、就活を始める前に明確にイメージしている学生もいるが、それがないからといって焦る必要はない。

 ではなぜ、多くの学生は「やりたいことが明確にない」ことに不安を感じてしまうのか。背景の一つに、あまりにも企業側が「やりたいことが明確になっていることが当たり前」という前提で、安易に「何がやりたいか」と問うてしまっていることがあるのではないだろうか。

 例えばインターンシップの選考の段階で、志望理由や入社後に実現したいことを聞かれても、それに答えるのは難しい。インターンシップは業界や企業についての理解を深めるために参加することが多く、エントリーの時点で考えが定まっていないのは自然なことかもしれない。

 「やりたいこと」という言葉から、具体的な仕事内容を考える学生も多いが、例えば、会社を選ぶ際の軸には「私にとっては何をやるかよりも誰とやるかが大事」という考えもあるだろう。あるいは「趣味の活動を重視してくれる会社がいい」など、ワークライフバランスの観点から進路決定をする人もいるのではないのだろうか。

 就活は、これからどんな人生を歩んでいきたいのか、自己理解を深める貴重な機会だ。職業について理解を深めるとともに、自分の得意なことや熱中できることを明確にしていく。

 「こんな環境なら自分の強みを発揮できそうかも」という仮の軸が見えてきたら、企業との接点を持ち、どこに違和感や共感を抱くのかを整理していこう。仮置きした軸を軌道修正していくことで、自分らしい「選社軸」が定まっていくだろう。

 一方、企業は学生の自己理解が深まっていない段階で、学生が「やりたいこと」が明確でないといけないように感じてしまう質問ばかりをするのではなく、一人ひとりの「興味・関心」や「得意なこと」を引き出して、理想の姿を一緒に考えていってはどうだろう。学生が「実現可能な自分の姿」を見いだしていけるようなサポートを企業にはお願いしたい。

(リクルート就職みらい研究所所長)



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