「他社の進捗状況を書く欄はどう書けばよいですか」。都内私立大学3年生の男子に聞かれた。まるで採用の本選のようなインターンシップのエントリーシートの締め切りが続々と迫る中、相談にやって来た。
「他に受けている会社とその進行状況、1、2、3社」と欄があり、学生はどこまで本当のことを書けばいいのか迷っているようだ。「ライバル会社を書いたら、気を悪くされるのではないか」「あまりいろいろと勘繰られたくないが、何が正解なのか」と悩んでいる。
他社の状況を聞いてくる会社側の目的の一つは「うちを受ける学生が他はどんな会社を受けるのか、併願先を知りたい」という情報収集だろう。また、他社がどのくらい採用活動を進めているのか、最終段階に来ているのならうちもそろそろ内定を出そうかと探りたいのだ。
ライバル社が書いてあると「比較されている」と心穏やかではないに違いない。やはりうちのライバルはここなんだな、と次年度はどんな採用フローにしようかと作戦を練るための情報収集になっているのだろう。
2つ目には学生の本気度を見るためだと思われる。本気で受けに来ている人は同業界の他社を受けているものだ。何の関係もないような会社がズラズラ書かれていると、うちは記念受験かと本気度が怪しくなる。
最終的には「内定辞退を避けたい」というのが最大の目的であろう。就活終了を学生に強要する「オワハラ」は禁止されているので、他社の状況を聞きながら本気度を見極めていく。
最近の学生は意外と正直に答える傾向があり、それでよいと思う。人事担当者はプロなので、質問されて矛盾が生じ、つじつまが合わなくなると信用を失いかねない。変な小細工はしなくてもよいのだが、時期によっては気をつけてほしい。
今の時期、つまり正規の就活序盤では正直に話してかまわないだろう。多少、受けている企業の業界がばらけて定まっていなくても、序盤は自らの適性を見ているとしてそれほどおかしくはないからだ。
気を付けたいのは終盤である。いつが終盤かというと、2月中にエントリーシートの締め切りが混み合っている今年の状況を考えると、内定出しは早まりそうだ。あおるつもりはないが、4月には内定が出る会社が多くなると予想される。
終盤の他社状況の答え方は単に正直に言えばよいというものではなくなってくる。「オワハラは禁止」であっても「内定を出したらうちに来ますか?」などと確認される。「考えさせてください」と言葉を濁していると後回しにされ、内定は出なくなるケースもある。
面接では「御社が第1志望です」としっかり伝える必要がある。企業も辞退者を見越して多めに内定を出す。終盤戦では誠実さと戦略性を持ちたい。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/