「なぜエントリーシートで短所を聞くのですか?」とある企業の人事担当者に聞いたところ、しばらく考えて「なんとなく、長所と短所はセットだから」という答えだった。「ええっ、そんな理由で質問しているの」とあぜんとした。
それを答えるのに、学生はどれだけ苦労しているかを知っているのだろうか。他社の人事担当に聞いてみると「自分のことを客観視できているか、自己分析できているかを確認したいから」ということだった。思わず「あなたは客観視できているのですか?」と聞き返したくなる。果たして就職に際し、自己分析はどこまで必要なのか。
今回は年度初めということもあり、少し辛口で会社側の人事担当の皆さんに対して面接の質問について投げかけたい。
私はかねて自己分析にはあまり時間をかけなくてよいと学生たちに伝えている。何のための自己分析なのか、目的を意識すること。人間修養のためではなく、結婚のためでもなく、働くうえで自分のどんな長所をどんな業界の仕事に役立てていけるかを考えるための作業である。
自己分析はやり始めるとキリがなく、終わりのない沼にはまっていく学生もいる。効率よく「長所を洗い出す」「生かせる業界・職種を探す」「長所を説明できるエピソードを書く」という3つのステップで考えるとよいと思う。
自分の短所について深く掘り下げる必要があるだろうか。仕事は自分の長所を生かしてするもので、短所のことを考えても無駄ではないか。もしも短所から自分のできる仕事を除外していく消去法で仕事選びをするとしたら、それはお勧めできない。
なぜなら短所がもしも「飽きっぽい」となると、それは「どんな仕事も続かない」で終わってしまいそうで残念すぎる。仕事が未経験な学生のみなさんには「やってみなければわからない」という可能性の道は大いに開けているのだから。
学校ならば別である。入学の際に「長所・短所」を書かせる調査書も見てきたが、先生がその子の短所を知ることは役に立つのかもしれない。それを直すよう導いてくれるなど、気を付けてもらえると期待できる。
就職面接で不適切な質問をしてはならないのはハラスメントに敏感になってきた現代において常識である。もちろんセクハラ、パワハラは言語道断。それに加えて短所のような仕事にあまり役に立たない、しかも学生に不利になる情報収集も考え直してほしい。
他にも多くのエントリーシートを見ていると、職業安定法に抵触しそうな質問が結構ある。小さい頃や中学時代について具体的なことを尋ねるのは出身地を聞いていることに近く、アウトと思われる。短所を説明するのに、その言い方や準備に学生は苦労している。仕事に際して聞くのは長所だけでいいと思う。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/