知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】「後半戦」にチャンスあり 中小・ベンチャーに目を 曽和利光(2025/4/22付 日本経済新聞 夕刊)(2025/05/13)


 4月1日時点の大学生の就職内定率は61.6%、就活を終了した進路確定率も39.9%(ともにインディードリクルートパートナーズリサーチセンターの就職プロセス調査)と、就職活動は早期化の中、正式解禁日の3月1日の1カ月後に既に「後半戦」の様相を呈している。まだ内定をもらっていない学生は、こんな話を聞くと不安でしかたがないかもしれない。しかし、チャンスはまだある。

 大手企業の採用活動のピーク後に毎年起こる現象がある。早期に大企業ばかり狙っていた学生が、最終的には願いがかなわず、もう一度「後半戦」で就活をやり直す動きだ。その時期になると、各種就活サービスに新しく登録をする学生が増える。

 この売り手市場でも大企業はずっと人気で、従業員5000人以上の求人倍率は約0.3倍(25年卒、リクルートワークス研究所)で、希望者の3人に1人しか入社できない。個々の会社の合格率は1%前後のところも多く(つまり倍率100倍)、大企業への入社は今でも極めて難しい。いくら優秀な人材でも、大手ばかり受けていたら全て落ちることは珍しくないのだ。

 このことをよく知っている会社の採用担当者は、この時期を待ちに待っている。大企業には知名度やブランドで負けても、仕事の面白さや成長性や働きがいでは負けないと息巻く採用担当者たちは、大企業に受からなかった学生たちを歓迎している。大企業の選考はどうしても「落とす選考」になりがちで、志望動機の曖昧さやちょっとした面接の失敗で落ちてしまう。

 だから、そこには自社にとって必要な人材がまだまだ残っていることを知っている。大企業が採用のピークの際は、なかなか振り向いてもらえなかった学生たちが、ようやくまともに自社に向き合ってくれるチャンスと考えているのである。

 もちろん、その多くは中小・ベンチャー企業だ。大手と比べれば待遇は見劣りするかもしれない。名前も知らない企業ばかりで、意欲がわかないかもしれない。しかし、日本企業のうち99.7%は中小企業で、全雇用者の約7割が中小企業に従事している(中小企業庁「中小企業白書」)。中には、隠れた世界一の企業なども多く、日本は世界に冠たる中小企業大国だ。

 また、ファーストキャリアを中小やベンチャーから始めて後に成功を収めた人もごまんといる。大企業は分業が進んでいるが、中小企業では経営の全体像が見えやすく、裁量や経験の幅が大きく経営者の近くで働けるなどのメリットがある。「中小企業=不利なスタート」という見方は時代錯誤になりつつある。むしろ、起業家精神を育み、視野を広げ、組織を超えて価値を生む人材にとっては最良の出発点ともなりうる。

 就活が長期化すると気力が薄れてくるが、ここからが本番だと学生を待ち構えている企業があることを忘れないでほしい。

(人材研究所代表)



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