「短所」だけでなく「挫折経験」も面接において答えづらい質問のひとつだ。「挫折とそれを乗り越えた経験」という設問がエントリーシートに見受けられる会社もある。これもできればやめてほしい設問だが、百歩譲って、その乗り越え方を見たいという意図と考えれば、学生も準備する価値があると思う。
なぜなら企業での実務においては、困難な状況を乗り越える力「レジリエンス」が求められるので、「挫折」よりも「その乗り越え方」が見たいのであろう。人生順風満帆、全く挫折を知らない人というのは、怖い部分がある。
入社すると、必ず困難な状況は待ち受けており、小さな失敗があったとしても、壁を乗り越えていく必要があるからだ。ちょっとした壁にぶつかっただけで、すぐに辞めてしまいそうな人を見極めておきたいのはわかる。
ただ、学生の方では、挫折経験を書くのは悩ましい。事の重大さの見極めが難しいのだ。例えば「留年したこと」はどうだろう。
たかが1年くらい余計に勉強期間があっても、長い人生において大した問題ではないともいえるが、一方で計画通りに物事を運ぶことができない、予算も大幅にかかってしまうなど、マイナス面も大きい。あえて自分から言うことではないと思う。
聞かれたら、留年の理由を言えばよいだけだ。「病気・けが」というのも就職の面接においては難しいテーマになる。避けた方がよいと思われるものだ。
ではどんな答えがちょうどよいのか。例えば「昨年、御社にインターンシップでうかがった際、○○について理解できていないことに挫折感を抱き、その後、勉強するきっかけとなりました。こうして本選考に呼んでいただけて、その成果をお話することができ、感謝しています」というのはどうだろうか。
面接においては「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」を聞いた後の深掘り質問で「その活動の中で、何か困難だったことはありますか? それをどう乗り越えましたか?」というのはよく聞かれる。
かといって、その困難な経験も含めたエピソードを初めから「ガクチカ」に書く必要はない。エピソードはうまくいったこと、成果などで構成するのがよいと思う。マイナス面は、あくまでも聞かれてから答えるくらいでよいのではないだろうか。
「自己PR、ガクチカ、志望動機の3大質問」「挫折経験」だけでなく、「就活の軸」や、会社側に学生が質問する「逆面接」など、ネットにはたくさんの事例が出ており、テンプレート化されている。参考になるが、丸写しするのはやめよう。
挫折経験は「答えづらい質問」ではあるが、その乗り越え方を含めたやり取り全体が見られている。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/