知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】採用のオンライン化 早期離職の一因にも 上田晶美(2025/6/24日本経済新聞 夕刊)(2025/07/01)


 「思っていた働き方と違いました」。転職したいと相談してきた若者はまだ入社3カ月。もう少し様子を見てはどうかと思ったが、「今ならまだ他の会社に移れそうなので」と言う。

 最近問題視されている若者の早期離職だが、就活のあり方が影響しているのかもしれないと考えるようになった。厚生労働省の調査で、大学の新卒入社(2021年)の入社3年以内の早期離職率は34.9%と、ここ15年では最悪となっているのはなぜなのか。これはコロナ禍で編み出された採用活動のオンライン化が一因となっているのではないかという気がする。

 企業説明会やインターンシップなどに始まり、就活本番になってからはオンライン面接がある。一次面接だけならまだしも、二次面接もオンラインのところがある。減ってはいるが、役員面接まで全てオンラインという会社もまだ残っている。

 ある大手メーカーでは二次面接まではオンラインで、そこから希望者に会社見学をしてもらうそうだ。その段階で学生がこの会社は自分には向いていないのではと気づいても、次が役員面接であれば辞退するのはもったいなく、一応内定をもらっておきたいと考えるだろう。

 面接は会社側と学生側、お互いに相手を知る機会になる。それがオンラインで行われる場合、特有の弊害がある。

 まず、会話に余白が乏しく、質疑応答のみになりがちである。そうなると人柄は伝わりづらい。オンラインではその人の全体像をつかみにくい。会ってみたら、ずいぶんと印象が違う人だったというのも多いものだ。

 またオンラインでは声の大きさなどはわからない。マイクに近づければ、声は大きくなるからだ。視覚的にも聴覚的にもその人の一部しか伝わらない。

 学生から見ても、オンライン面接は担当者との会話にとどまってしまう。これがもしも会社に赴き面接を受けるとなると、受付をはじめ、廊下を行き交う人たちのほか、エレベーターの中で社員に会うこともあり、どんな雰囲気なのか、かなりうかがい知ることができる。

 ある都市銀行に入行した人は複数行から内定をもらったが、決め手になったのは、その銀行の行員たちの対応だったそうだ。面接に行った際、エレベーターに乗り合わせた人から「今日は面接なんですか? 頑張ってくださいね」と声をかけてもらったそうだ。それも1人ではなく、複数の人たちだったという。

 そんな会社との相性のようなものを見るには、オンラインだけでは難しいように思う。早期離職はやむなしともいえるが、入社数カ月では会社にとっても社員にとってもデメリットは大きい。できるだけ就活の過程で対面で接する機会を増やし、お互いの相性を見ることが必要ではないだろうか。
 
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

前のページに戻る

入会のご案内
入会のご案内