知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】企業選びの軸は 得意なことを生かそう 栗田貴祥(2025/7/1付 日本経済新聞 夕刊)(2025/07/08)


 夏季休暇に実施されるインターンシップを控え、就職活動の動向について大学で講演する機会も多くなっている。そこでよく質問されるのが「就職活動を順調に進める学生と、苦戦する学生にはどんな違いがあるのか」といったものだ。

 違いを知ることで効率よく内定を獲得したい。そんな本音も見え隠れするが、納得感を持って就職先を決めた学生たちの活動プロセスや考え方に、ヒントが多いのも事実だ。今回は自分らしい「選社軸」をどう作っていくべきかを考えていきたい。

 業界や企業選びで多くの学生がぶつかる壁に「消費者視点から抜けられない」というものがある。「映画が好き」「コーヒーが好き」「〇〇ブランドの服が好き」など、趣味嗜好として消費する立場からの「好き」がそのまま志望動機になる学生は少なくない。

 しかし、自分が好きだったりよく知っていたりする領域に絞り込むあまり、内定に至らなかった場合に、そこからどう選択肢を広げていけばいいのか分からなくなってしまうのだ。

 社会人になれば誰もが、商品・サービスを通じて価値提供する側に立つ。消費者として好きな気持ちはもちろん大切だが、自分のどんな強みや特性が、その業界・企業において役立つのか、貢献できるのかがより重要になってくるだろう。

 そこで、「自分だからこそ、こんな価値を提供できる」という視点を持つために欠かせないのが、自分の「得意」を知ることだ。人にとっては大変な努力が必要でも、自分はごく自然にできてしまうこと。周りから「よく、そんな簡単にできるね」と感心されること。そうした「得意」を発揮できる仕事環境や業務内容こそ、「ありがとう」と感謝されることが増え、自己効力感につながっていく。

 アルバイトでお客さんとの会話を楽しめるような人は、対人折衝の仕事に合うかもしれない。「得意」を起点に自分に合った業界や企業を見ていくと、「扱う商材は異なるけれど、この職場環境・業務内容なら力を発揮できそう」と選択肢を広げやすくなるだろう。

 得意なことは、様々な活動の中で見えてくるものだ。学生生活を通じて複数のコミュニティーを持ち、今いる場所や関係性の外に目を向け、新しい環境に飛び込んでいく。すると、「私にはこんな面があったんだ!」「こんな考え方もできるんだ!」という自己発見につながっていく。様々な場で自分試しをすることで、周囲との違いを知り、自分らしい考え方や価値観に気付いていくだろう。

 就活の準備に向けて、好きなこと・やりたいことを焦って絞っていくよりも、まずは充実した学生生活を送り、自分の理解を深めていくことが、自分らしい「選社軸」を見つける近道になるのかもしれない。

(インディードリクルートパートナーズリサーチセンター上席主任研究員)


     

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