夏季休暇を目前に、大学3年生などの中にはインターンシップへの参加が決まっている人だけでなく、すでにプログラムがスタートしている人もいるかもしれない。自分の強みや弱みに気付き、理想とする生き方、働き方を探り、世の中にはどんな業界や仕事があるのかを知っていく。自己と社会それぞれへの理解を深めるために、インターンシップへの参加はよい機会になるだろう。
昨今の就職活動では学生への追い風が続き、早々に内定を取得している学生も多い。企業側が早くから学生と接点を持ちたいと、採用活動を早期化させていることも要因としてあるだろう。学生の中には「就活が早く終わってよかった」と捉える人もいるかもしれないが、中長期的に見ると課題も見えてくる。
2025年卒の学生に、就職先の決定における選社基準や決定プロセスについて自己認識を聞いた当センターの調査では「就職先決定を振り返ると安易に決めてしまったと感じる」「就職先について、もっと深く考えるべきだったと思う」との回答がともに43.6%にのぼった。
「就職活動中に、もっと多くの選択肢を検討すべきだったと思う」は52.1%と半数を超えている。4~5割の学生が選択基準が曖昧なまま、選択肢を十分に検討せずに進路を決めたと認識していることがわかった。
また、就職活動を終えたあとに、自分の関心や強みを理解できているかを23年卒の学生に聞いたリクルートマネジメントソリューションズの調査では、「よくわかっている」との回答は6割にとどまった。
それでも入社後に違和感なくマッチしていればいいのだが、就職先を安易に決めてしまったと感じる学生のほうが、入社予定企業で働こうと考えている期間が短い傾向が当センターの調査結果からも表れている。
これはつまり、きちんと検討を重ねて選択できたかどうかが、入社後の勤続期間に影響する可能性があるということだ。
短期的な採用充足、人材確保のために、早くから内定を出して囲い込みたいという企業側の気持ちはよく分かる。ただ、入社後の活躍までを見据えれば、選考段階から、学生が求める働き方やキャリアについて一緒に考えていく姿勢が大切になる。
入社後にどんなキャリアの可能性や支援制度があるのか。こうした情報を提示することで学生は内定取得という目の前のゴールにとらわれていた視野が広がり、入社後の姿まで考えることができるかもしれない。
手間はかかるが、学生が覚悟を持って入社の意思を決定できるよう対話を重ねることが、ミスマッチを防いで定着や活躍へとつながり、企業と個人双方にとって幸せな結果をもたらしてくれることを願いたい。
(インディードリクルートパートナーズリサーチセンター上席主任研究員)