大学3年生の男子学生が相談に来た。一風変わった服装をしており、聞けば、大学の体育会応援部に所属しているという。夏だからガクランこそ着ていないが、独特の幅広のズボンと、最近あまり見たことのない懐かしいような学生カバンを持って、髪もピッチリとバンカラ風に決めていた。
部活の引退は4年生の12月になるそうだ。もうじき幹部になる予定なので、できれば3年生の12月までに内定の目星を付けておきたいという。「部活がブラックなんで、どんな仕事も耐えられます」と言う。開口一番、それだけで少し笑みがこぼれる。これが体育会が企業に好まれるところだろう。本当に法律違反のブラックではなく、肉体を限界まで追いこみ、精神的にもストレス耐性の強いことがアスリートの魅力である。
大学の一般のサークルの多くは幹部の交代を3年生の秋ごろにする。その頃から就活に打ち込むためという理由が大きい。インターンシップからつながる早期選考が始まり、あまり主になって組織運営ができなくなるので2年生に引き継ぐのだ。体育会と比べると1年早い。
体育会系の部活となると、ほかの学生に比べて就活はかなりの短期間でミニマムに進めざるを得ない。そんな事情もあり、先輩のコネルートがあったり、アスリート就職を専門に扱う就活支援会社もあったりする。
アスリート就職をまとめると3つに分けられる。(1)競技を主に継続しスポンサーをつける(2)仕事を主にし競技も続ける(3)競技はまったくやめて働く。(1)も(2)もかなりの一流選手であることが求められるため、特殊な事例であり、あまりキャリアコンサルタントの出番はない。
とはいえ、まれに野球、ラグビー、陸上などの花形スポーツの選手の就職の支援をする機会がある。(3)の部類で、競技人生に見切りをつけ、競技は趣味にとどめて仕事を主にしていこうという学生たち。ミニマム就活ながら、勝負へのこだわりは強いため、短期集中して頑張る姿を見てきた。
応援部の彼も(3)といえ、ミニマムに就活を進めるにはどうしたらよいかを相談しにきた。あまりたくさんの企業を受けるわけにはいかないので、業界を絞り込んで受けていく。その上で先輩の人脈を探してアプローチしてみる。エントリーシート、面接では苦労してきたストーリーをきちんと言語化して伝えられるようにする。一旦はそんな作戦を立てて帰っていった。
すぐにお礼のメールが来た。こういうところも先輩に仕込まれているのか、礼儀正しさに体育会気質を感じる。今時の若者には少なくなった分、おそらく就活でも吉と出ることだろう。学生ならではの部活動も大事にしながら、就活もやり抜いてほしい。納得できるまでやり続ければ就活には負けはない。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/