大学生は夏季休暇も終盤に近づき、インターンシップなどのキャリア形成支援プログラムへの参加を終えて一息ついている3年生も多いのではないだろうか。
プログラムを通じて、初めて企業や社会人との接点を持った人も少なくないだろう。これから始まる就職活動をどう進めていくか、学生たちを見守る親ならではのサポートという観点から考えていきたい。
就職活動を終えたときに「自分らしい意思決定ができた」と思えるかどうかは、活動中のキャリア探索行動をどれだけ深められたかが大きく影響している。キャリア探索行動とは、自分を知るための「自己探索」、仕事や企業を知るための「環境探索」、インターンシップなどで実際に体験することによる「社会との対話」などの行動があり、「自分らしさ」につながっていくと考えられる。
自己探索を深める第一歩は「そもそも自分はどんな価値観を大事にしているのか」を知ることだ。そのためにまず大事にしてほしいのは、今の目の前の学生生活を充実させることだ。その上で今いる場所や関係性の外に目を向け、多様な経験を積んでいくと、何に違和感や共感を抱くのかが見えてくる。
それまで大学と自宅、課外活動・アルバイト先を中心に過ごしていた生活に一歩距離を置き「なぜあんなに関心を持っていたのだろう」「何にひかれていたのだろう」と自問自答することが、大事にしたい価値観に気付くきっかけになっていくだろう。
さらに自分らしさを見いだしていく上で欠かせないのが、第三者からの問いだ。「これが好き」「心地よいと感じる」といった感覚は、他者から「なぜそう思うのか」と問われることで言語化が始まる。そんな素朴な質問を投げかけることで自己探索を深めるきっかけを与えてくれる存在の一人が、学生たちにとってもっとも身近な社会人である親ではないだろうか。
インターンシップや選考のプロセスを経て、学生たちは環境探索と社会との対話を深めていく。「選考で出会った社員のこんなところがよいと思った」「就業体験をした仕事の、ここが面白かった」といった素直な感想から、自分に合った環境や仕事内容を考えていく。
それに対して親ができることは、意見を言うのではなく、ただシンプルに「どうしてそう思ったのか」と問いかけることだ。その一言が本人の自問自答につながり、キャリア探索行動を深めていくきっかけになる。
ファーストキャリアの選択に正解はない。「自分らしい進路選択ができた」と満足して就職活動を終えることが、幸せな社会人生活につながっていく。そのために、親による問いかけも大きな力になっていくだろう。
(インディードリクルートパートナーズリサーチセンター上席主任研究員)