〇自己分析をしても好きな仕事が見つかりません
「就活本には、『やりたい仕事を探す』とか、自己分析をして『好きなことを見つける』と書いていますが、自分にはそれが見つかりません」と訴える学生が多いのです。「好きなことを仕事にしたい」と自己分析をしますが、それが見つからないと言うのです。確かに、仕事は長く続けていくので、選んだ仕事が好きであれば、一生続けていける可能性が高まります。ところが、「自己分析、即、好きなものを見つける」という考え方には問題があります。
好きなことが見つからないから就職を先送りする、留年する、大学院へ行く、フリーターになる、これこそ問題です。現在は、生きていくために何としても就職しなければならないという時代ではなく、ほどほどに豊かな社会がそれらを可能にしているようです。ネット時代で、案件検索も簡単、就職活動も多様化して可能性は無限です。あまりにも選択の自由があり過ぎることも一因になっています。
〇継続して役割を果たす」ことで、上手になり、好きになり、天職になります
それでは、自己分析はどのようにすればいいか、大切なことは、「自分の職業になるものは何か」、「仕事として継続することができるのは何か」という質問に答えることです。仕事とは、「役割を果たす」ことですから、「継続して役割を果たす」ことができるのは何かです。学生には、「選択できる可能性の中で好きなもの、いや、好きでなくても嫌いでなければOKだ」と勧めてきました。
私は、中高年の再就職支援を担当したことがあります。どのような方法で仕事を選んだのか、聞かせてもらいました。圧倒的に多かったのは、「卒業するとき、自分の可能性の中から選んだ」というものでした。初めから好きなことを仕事にしたのではなく、継続すれば上手になり、上手になれば好きになり、それを仕事にしてきたのでした。
私は、ジョブパークという若者支援組織で、支援したことがあります。好きなもの探しは脇に置いて、自分の人生を支える大切な仕事を獲得する動機を高めよう、気づいていない強みはないか、継続してやれそうなものは何か、家族、友人や知人が仕事としているもので、自分ができそうなものは何か。仕事は、役割さえ果たせば仕事になると教えました。
かなりの若者は、現実を直視して、「役割を果たすことができることは何か」と問いながら応募していきました。
仕事は、継続して役割を果たすことで、上手になり、好きになり、天職になっていきます。
阪井 輝昭(キャリアアドバイザー)