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【社会に出る学生のための人権入門】(第9回)人権とは? 情報リテラシーの重要性3(2018/05/10)


 前回の最後に紹介したように情報分析の上で「なぜ、なぜ、なぜ」と考える習慣は極めて重要である。なぜこのような内容の情報を提供しているのか、なぜこのような表現になっているのか、なぜこの時期にこのような情報を発信しているのか、この情報源はどこの誰なのか、情報源の目的はどこにあるのか、なぜこの写真や映像を使っているのか、なぜこのBGMをあえて流しているのか、なぜこの見出しなのか、等々と分析するだけでもいろいろなことが見えてくる。

 こうした基本的なことも多くの人々は考えていない。より正確にいえば、考えようとしてない。つまりその必要性すら感じていないのである。日本ではメディア・リテラシーの教育をほとんど行っていない。これらが情報に対する脆弱性の基盤を形成している。

 ここで述べている情報リテラシーとメディア・リテラシーの決定な違いは、多様なメディアを媒介しているか否かの違いである。情報リテラシーとは個人が媒介する噂や情報なども含まれるということである。より端的にいえば、ある政治家が街頭演説で述べていることを批判的に読みとる能力なども含まれる。

 しかし話術巧みな政治家にかかれば、ヒトラーのように多くの人々は間違った方向に誘導される。デマを駆使する政治家や誤った情報で不当な利益を得ようとしている人々に対して対抗するためには、情報リテラシーの能力が求められる。先人の研究を少しでも知ることによって、情報リテラシーの能力は確実に高まる。

 アメリカ合衆国にある政治宣伝分析研究所が、ナチスドイツの宣伝手法を研究した結果を「政治宣伝7つの原則」として公表している。それらを知るだけでも、情報リテラシーの能力は高まる。7つの原則は以下の通りである。

 まず、第一は「ネーム・コーリング」。攻撃対象の人物や組織・制度などに増悪や恐怖の感情に訴えるレッテルを貼るといった手法である。週刊誌や夕刊紙ではネーム・コーリングが多用されている。ある人物や組織に対するレッテル貼りによって、固定的なイメージを作り上げていることも日常的である。政党の機関誌でも使われることが多い。

 第二は権力の利益や目的の正当化のための「華麗な言葉による普遍化」である。華麗な言葉によって、権力者の邪悪な意図が覆い隠されてしまうことは、多くの政治宣伝を観れば自明である。他の5つの原則は次回に紹介したい。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 主任教授)


     

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