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【社会に出る学生のための人権入門】(第18回)人権とは? これからの社会と人権Ⅳ(2019/02/14)


 前回紹介したスマートグラス(高性能メガネ)が、さらに進化すれば盗撮をはじめとする多くの犯罪にも利用されてしまう。大学の入学試験でスマートフォンを使用した不正が発覚したことがあった。高性能メガネでタップするだけで写真撮影することができれば、外部の人に問題を送信することが容易にできる。その解答を高性能骨伝導スピーカーで聴くことができれば、不正が簡単にできることになる。現在の骨伝導スピーカーでなら静寂な環境の入学試験会場では不正が見破られると考えられるが、さらに進化すれば分からない。その時代になれば入学試験時の諸注意の内容も変化するだろう。

 さらに高性能メガネのレンズが、映像スクリーンとして活用できるようになれば電話の相手と同じ場所で会話をしているようにできるかもしれない。あるいは仮想現実の端末として活用されれば、現地に行ったように語学学習が実践的にできる時代になるだろう。いつでもどこでも時間と距離を乗り越えることができる仮想現実(VR)が、高性能メガネで実現すれば教育も仕事も日常生活も間違いなく変わるだろう。

 またセンサー技術の飛躍的な進歩によって、遠くない時期に同様のことが現実のものとなるだろう。例えばグーグルは、シリコン製の樹脂センサーをコンタクトレンズに内蔵した製品を完成させている。商品化されるかどうかを分からないが、このコンタクトレンズ内蔵センサーは、涙で血糖値を測るものであり、その測定結果を常時スマートフォンに送信し、スマートフォンから自動的に病院に送信することも可能である。

 これらのセンサーは、技術の進化と低廉化によって爆発的に増加している。2023年には1兆個規模のセンサー社会になるといわれている。スマートフォン一台だけでも多様なセンサーが10個以上も内蔵されている。多様なセンサーと人工知能が、スマートフォンや自動運転車などの高度な情報機器や製品を支えているのである。

 加速度センサーはカメラの手ぶれを検知し、着実にぶれない写真撮影を行う。また多様な顔認証センサーは、子どもが笑顔の時だけ自動的にシャッターをきって撮影するデジタルカメラに採用されている。気圧センサーに至っては5㎝の精度で高度差を検知することができる。自動運転車も車に取り付けられた多くのセンサーから得た情報を人工知能が認識し判断することによって安全に走行できる。

 こうしたIT革命の進化にともなう無数の製品群は、前回にも紹介したように人権の伸長に大きく貢献する反面、マイナスの側面ももたらすだろう。光が強ければ強いほど陰の部分も濃くなることを十分に認識する必要がある。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 主任教授)


     

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