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【社会に出る学生のための人権入門】(第24回)人権とは? これからの社会と人権Ⅹ(2019/08/08)


 前回に引き続いて遺伝子編集の技術について取り上げたい。
 この技術は地球温暖化をはじめとする環境破壊を克服するために極めて強い光合成の仕組みをもつ植物をつくることも可能にするだろう。そうした植物は、温室効果ガスの二酸化炭素をより効率的に吸収することができるようになるだろう。しかしそれが食物連鎖や植物体系を破壊することになるかもしれない。

 これらの問題はゲノム革命の進化だけではなく、ゲノム編集と3Dプリンター(立体印刷機とでも呼ぶべき機械)の合体である「バイオプリンティング」の技術につながっている。生体組織をコピーする技術である。すでに一部の生体組織の作製に利用されている。いずれ移植用臓器が造られるといわれている。医療のあり方も大きく変化していくことは間違いない。

 最新医学知識データベースを学習し、ガン患者の病歴・治療歴・検査結果・遺伝子データに基づき、患者ごとの治療方針を提案できるIBMの人工知能「ワトソン」の活用と遺伝子編集による治療やバイオプリンティング技術の活用で医療現場は現在とは大きく異なってくるといえる。

 一方、遺伝子編集による知力・運動能力の強化とバイオプリンティングを活用した人間はサイボーグのようになってしまうかもしれない。このような人間そのものを変えてしまう技術の活用には、より一層の人権視点が求められることを忘れてはならない。

 以上に述べたことが日進月歩で進化している。
 それらの科学技術の進歩の中でも、中核をなしている研究分野の一つが、人間の脳を解明しようとする脳科学の分野である。脳科学の進化は今日の人工知能研究の礎といえる。脳科学の進化なくして今日の人工知能はあり得なかった。

 人工知能研究は人口変動とも密接に関わっている。今日の少子高齢化に伴って、日本の全人口に占める六五才以上人口はすでに二八%を超え、女性だけで見るとすでに三〇%を超えている。こうした状況が認知症高齢者を飛躍的に増加させている。脳科学の進展はこれらの認知症等の予防や悪化をくい止めるために大きく貢献していくといえる。

 また脳科学とIT革命の進化は、これまでの学習方法や学習内容を大きく変える可能性をもっている。さらに人間の感情や意識がどのように形成されているのかも解明されようとしている。それは差別意識や偏見が脳内でいかにして作られているのかも明らかにするだろう。それだけではない。さらなる脳科学の進展は人工知能をさらに進化させ、社会に根本的な影響を与える可能性も高い。

 本連載を読んでいただいている学生や企業の皆さんにこうした科学技術の進歩と人権にも深い関心を持っていただきたいと思う。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 主任教授)


     

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