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【社会に出る学生のための人権入門】(第27回)人権とは? デジタル調査の時代Ⅰ(2019/11/15)


 前回、リクナビ問題を執筆させていただいた。その中で就活生のサイト閲覧歴等のデジタル活動をAIで分析し内定辞退率を五段階で評価していたことも紹介した。

 しかし現在のネット上の個人情報や個人データの在り方では、内定辞退率だけでなく「デジタル差別身元調査」も可能になるような状況にあると指摘せざるを得ない。パソコンやスマホに届くデジタル広告の中でも個人を対象にしたマイクロターゲット広告が成立するためには広告の対象者である特定個人の趣味嗜好や思想信条という情報を把握する必要がある。それらの個人情報が把握されるということは、これまでの身元調査と同じことがネット上で簡単にできることを意味している。

 サイト閲覧歴やキーワード検索歴、「いいね」ボタンの分析等の個人データが蒐集され、社会心理学的知見を加えてAIで分析することで、消費者個人を特定できる時代である。これらの分析結果が、マイクロターゲット広告だけではなく、個人情報を知りたがっている多くの個人や組織に差別的に悪用されることになれば、間違いなく差別身元調査のデータにもなる。すでに政治・経済・社会に重大な影響を与えているが、リクナビ問題のように求人活動でも悪用されていた現実を見れば、就職だけではなく、結婚調査にも差別的に利用されているかもしれない。

 かつて有権者の巨大データベースを構築したデータ収集・分析会社である「ケンブリッジ・アナリティカ(CA)」を紹介したことがあった。この企業が所有するアメリカ人の個人データには、名前、住所、選挙人登録歴、購読雑誌、ウェブ閲覧歴、ショッピング歴、各種政治政策への関心度や態度、各種選挙での投票可能性などが存在していた。こうした個人情報によって、特定の人々に向けて作った特定のメッセージを流すことができるようになっていた。 米国人二億3000万人と500種類のデータを持っていたのである。これらの個人情報は思想信条等にも結びついており、日本における差別身元調査項目とも一致する。それらの情報がネット上にはビッグデータとして溢れており、十分に保護されていなければ、間違いなく差別身元調査のデータとして悪用される。こうした時代をふまえた公正採用の在り方が求められているといえる。次回さらに掘り下げて考えていきたい。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 主任教授)


     

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