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【社会に出る学生のための人権入門】(第36回)人権とは? 新型コロナウイルス感染症問題とフェイク(虚偽)情報(2020/08/13)


 近年、年配の方ならご存じの1980年代後半に発生したバブル経済と同じようなことが情報分野で発生している。学生の皆さんもバブル経済という言葉を聞いたことがあるだろう。バブル経済のときのキーワードは「金」であった。土地と株とゴルフの会員権の高騰に代表された経済現象である。本来の地価は、その土地を活用してどれだけの収益を上げることができるか等によって決まるものである。そこから大きく遊離して高騰した。それらが日本経済に与えた巨大な悪影響は語る必要もないだろう。多くの人びとや企業等の中にはバブル経済に飲み込まれた人びとも少なからずいた。学生の就職活動にも多大な影響を与えた。すでに大学の教育研究者であった私も就職活動で悩む学生の相談に乗ったことを昨日のことのように記憶している。その後、経済的に失われた20年ともいわれた時期を過すことになった。

 今、この「金」が中心であった「バブル経済」から30年を経て「情報」が中心の「情報バブル」になっている。こうした現象が、個人「情報」を錬金術の源泉にしているデジタル資本主義を生み出した。政治や社会をはじめ多くの分野にも多大な影響を与えている。それも単なる情報バブルではなく、「フェイク情報バブル」になっており、世界に大きな悪影響を与えている。そのフェイクバブルが、今年に入って人びとの生命に関わる問題と直結している新型コロナウイルス感染(以下「新型コロナ感染」という)症問題でも大きな影響を与えており、新型コロナ感染症に関わる差別にも大きな影を落としている。

 新型コロナ感染に関わるパンデミックは読者の皆さんの多くがご存じだろう。新型コロナ感染症等が世界的流行(感染爆発)になることである。一方、インフォデミック(infordemic)とは、フェイク情報を含む情報が世界的に拡散することである。情報(Information)と流行・伝染(Epidemic)の合成語である。間違った情報が拡散し、それらの情報を元に多くの人びとが誤った行動に走り、その行動によって、物資の買い占め等をはじめとする社会生活に大きな支障や混乱をを来すことである。また正しい情報が伝わるのを大きく阻害することであり、社会に大きな悪影響等を与えることである。前回述べたように人びとは恐怖心を抱くとデマやフェイクを信用しやすくなる。新型コロナ感染に関する恐怖心は、多くのフェイク情報を信じる心理的基盤になっている。WHO(世界保健機関)も新型コロナ感染のパンデミックを宣言する前の今年2月段階でインフォデミックの危険性に対する警鐘を鳴らしていた。次回に具体例と情報チェックリストを紹介したい。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 主任教授)


     

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