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【社会に出る学生のための人権入門】(第56回)AI(人工知能)の進化が人権問題に与える影響は?④(2022/04/14)


 前回は戦争時に利用される自律型致死兵器(ロボット兵器)に関して紹介した。今後のビジネスや日常生活においても、広範囲に影響を与えるのは間違いなくAIの進化である。

 例えば自動車の運転は人の命と密接に関わっている。ドライバーの瞬時の判断によって命の選択が行なわれることもあり得る。避けようのない自動車事故に遭遇した場合、何を重視するのかによって、自動運転車に搭載されたAIドライバーのハンドルの切り方は変化する。車に乗車している人を重視するのか、前方の人びとの中でもどのような人びとを重視するのかということは、そのAIの学んだビッグデータ等が大きく影響する。

 より具体的に考えて行こう。AIの優れた点は、例えば1000のAIドライバーが自動運転で経験したことが一つのAIに凝縮できるということだ。販売された自動運転車が町中を走行しているデータは通信によって、自動運転車を製造した企業や自動運転車用のAIを製造した企業にも共有される。それらのビッグデータはAIドライバーをさらに進化させることになる。その進化したAIドライバーの認知・判断・操作の能力は他のAIドライバーにデータ通信によって簡単にコピーできる。つまり各自が購入した自動運転車は購入してからも運転性能を向上させることが可能になる。いずれそのようなサービスも登場してくるだろう。人間ドライバーであれば各自が実際の運転で学んだことを他のドライバーに伝える場合、その人の頭脳をコピーすることはできない。その人から座学や実践で教えてもらわなければならない。

 さらにAIドライバーは恐怖心や運転中に邪念をもつことも居眠り運転をすることもない。私は毎年レンタカーで雪道を走行する。事故を起こしたことはないが、アイスバーンの道路を走るのはいつも緊張する。雪道の鉄則は「急」のつく運転をしないことである。急ブレーキや急発進、急ハンドル等である。しかし雪道に慣れていないドライバーは、恐怖心等から急ブレーキを踏んだりする。これによって車のコントロールができなくなる。AIドライバーにはそのような恐怖心はない。人間ドライバーの優れた点もあるが、AIドライバーの進化は加速度的である。これらは自動運転車だけではない。

 AIを活用した自動翻訳(機械翻訳)の精度も飛躍的な進化である。かつて日本では記号処理型AIが研究されてきたが、現在のAIは人間の脳内の構造を工学的に模倣した「ニューラルネットワーク型」である。両者のAIを自動翻訳で比較すれば大きく異なり翻訳文は飛躍的に進化している。こうした現象がAIを活用するすべての分野で起こり、私たちのビジネスや仕事に圧倒的な影響を与えていくのである。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 主任教授)


     

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