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【社会に出る学生のための人権入門】(第70回) チャットGPTがこれからの社会に与える影響②(2023/06/08)


  前回からチャットGPTに代表される生成系AIついて執筆している。チャットGPTの出現はビジネス界だけでなく多くの分野に大きな衝撃を与えている。チャットGPTは「大規模自然言語処理AI」と表現されることもあり、多くの人びとは文章で質問した内容を文章で回答してくれるAIという認識が大半である。こうした認識だけではチャットGPTがこれからの社会に与える影響を過小評価することになってしまう。あえて申し上げておきたい。社会を激変させる可能性を有している。本稿ではそうした可能性を紹介する前に基本的なことを解説しておきたい。

 GPTとは「Ggenerative Pre-trained Transformer」の略であり、それぞれの単語の頭文字をとって「GPT」と表現されている。「Ggenerative」(ジェネレーティブ)とは「生成力のある」「生成的」といった意味であり、「Pre-trained」(プレトレインド)とは「事前学習」等の意味である。「Transformer」(トランスフォーマー)は元々「変化させるもの」あるいは「変化するもの」等の意味であるが、ここでいう「トランスフォーマー」とは、グーグルが2017年に発表した言語モデルのことを指している。チャットGPTの基礎になったのがこのトランスフォーマーである。大量のテキストデータから言語の特徴をつかみ、文章の作成能力を飛躍的に高めることに成功した。GPTもこの技術を応用したものであり、文字だけのビッグデータであるテキストデータを提供すれば自動的に学習する能力を持ち、日進月歩で能力が向上していく。

 AIの学習規模を示す単位はパラメーターである。オープンAIによって2018年に発表されたGPTー1は、1.1億パラメーターであったが、その4年後に社会に衝撃を与えた2022年11月30日発表のチャットGPT(GPTー3.5)は1750億パラメーターであった。そして本年2023年3月10日に明らかにされたGPTー4は5000億パラメーター以上といわれている。驚異的な学習規模の増大である。GPTー3.5は日本の医師国家試験には合格しなかったが、GPTー4は2018年度~2022年度の医師国家試験に合格できたと発表されている。すでに米国では司法試験に上位合格できる状況であることも報道されている。今後さらにAIのパラメーターが拡大し、より多くのビッグデータを吸収していけば、より多くの分野でより優れた回答ができるようになる。一方で多くの深刻な問題点も明らかになっていくだろう。それらは公正採用にも大きな影響を与える。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 主任教授)


     

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