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【社会に出る学生のための人権入門】(第71回) チャットGPTがこれからの社会に与える影響③(2023/07/13)


 本連載で紹介しているGPTは膨大なテキストデータから学んでいる。現在はウィキペディア等を始めとする膨大な無償のデータから学んでいる。それも2021年9月までのビッグデータである。今後はより新しいビッグデータからも学ぶことになっている。またGPTは生成AIといわれるようにこれまでのAIのように各種データの分析に使われるだけでなく、画像や音声、コンピュータープログラムなどを生成することができるAIでもあり日進月歩で進化している。

 GPTの基盤はあくまでもコンピューターであり、人間が学ぶスピードよりはるかに早く、学んだことも忘れない。コンピューターの進化とともに一層早くなる。私たち人間も多くのビッグデータやテキストデータ(例えば教科書)で多様なことを学んできたが忘れることも多い。そのコンピューターが量子コンピューターになれば学ぶスピードは桁違いに速くなる。量子コンピューター研究の最先端を走っているのはAI技術の最先端にいるグーグルだ。驚異的なスピードを誇るスーパーコンピューターよりはるかに早い計算力をもつ量子コンピューターは、スーパーコンピューターで一万年かかる計算を三分二〇秒で計算できたとグーグル社は発表している。一五億倍以上の恐るべきスピードだ。確かに量子コンピューターは汎用性が低く、解ける問題も限定されていると指摘されている。しかし進化したAIがそれらの問題もクリアする可能性は高い。

 こうした技術がGPTの基盤コンピューターに使用されれば、私たちの能力では予測できないプラス面マイナス面の事態が発生すると考えられる。もっとも恐れているのは、進化したGPTが私たちの予想を大きく超える問題を発生させる可能性があることだ。GPTがもたらすプラス面マイナス面の影響を考えていくと予期し得ない問題が発生する可能性が高いことも分かってくる。それらを慎重に検討しながら開発を進めていかないと取り返しのつかない問題が発生する。

 チャットGPTが言葉を「理解」できるようになった点は大きな進化である。厳密にいうと理解しているわけではない。これはすでに本連載で述べてきた。自然言語処理はAIにとって最も困難なものであった。それを事実上クリアした。そこに極めて大きな意味がある。人間と他の動物の違いは複雑な言語を駆使できるかどうかだ。人間が言葉を獲得したことによって人類社会は大きく前進した。具体的には次回で紹介したい。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 主任教授)


     

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