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【社会に出る学生のための人権入門】(第72回) チャットGPTがこれからの社会に与える影響④(2023/08/10)


 これまでのAIはビッグデータを分析することが中心であったが、チャットGPTは違う。チャットGPTは、これまで紹介したようにAIの大きな壁であった大規模自然言語処理だけではなく、生成AIともいわれるように多くの生成能力をもつ。

 具体的には文章の執筆、要約、添削、校正、翻訳、完成等をはじめ音声を文字にし、正確な日本語にしたり要約したりできる。また英語文章を現代的に分かりやすく校正や修正することもできる。外国語の多くのデータを翻訳することも可能だ。さらにウェブサイトの生成に必要なプログラムを書き、難しい検索の実行もできる。GPT-4を基盤にした有料版であればWeb検索機能を使ってリサーチし情報をまとめる能力ももつ。

 創作・対話も可能であり、多くのアイデアを出してくれる。あらゆる種類の形式の文章や書類の作成も容易に行なう。人間が策定した企画案の問題点を指摘することもでき提案書や企画案も創作できる。あるいは特定の役割を担って対話もでき画像や音声を創作することも可能だ。但し上記を安全に使用するためには個人情報保護をはじめとする各種の取組みが必要である。例えば自動車運転技術を知らない人が自動車を運転すれば暴走する。同様のことが情報分野で発生する可能性が存在する。情報の暴走は社会や集団・個人に破滅的な被害をもたらす。分かりやすい一例でいえば、化石燃料を活用して産業を発展させてきた結果、私たちが住む地球が温暖化の危機に直面することになった。化石燃料の暴走的消費が予期せぬことを発生させた。20世紀の産業基盤は化石燃料の石油であったが、21世紀の産業基盤は「情報」や「ビッグデータ」といわれている。その情報の一形態がインテリジェンス(知能)だ。知能面で「地球温暖化」のようなことが起こる可能性が存在するということだ。

 「人間は考える葦である」というパスカルの言葉を借りれば「GPTは『人間を超える考える葦』になる」可能性が高い。このパスカルの言葉にはその前に別のフレーズがある。それは「人間は一本の葦にすぎず自然のなかで最も弱いものである」というフレーズだ。その「最も弱い人間」が地球上で「最強」になったのは「考える葦」だったからだ。もし「考えるGPT」になれば地球上の「最強」のものになる可能性は否定できない。あるいはGPTを駆使できる人間が最強の力を持ち邪悪なことを犯すかも知れない。どのようなリスクが存在するのかは次回に詳述したい。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 主任教授)


     

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