Google等に代表されるプラットフォーム型企業は、インターネットやスマートフォン、パソコン等がなければ成立し得ない。これらのシステムと機器が多くの人びとに普及したからからこそ膨大な利益を生み出すビジネスになった。多くの人びとがこれらのシステムや機器を使用しなければ、情報を活用してビジネスを展開することもできなかった。圧倒的多くの人びとがネットにつながっているからこそ、プラットフォーム型企業は成立している。それでも自然言語を十分に使いこなすAIは、チャットGPTが登場するまではなかった。インターネットとスマホがビジネスや企業の在り方を大きく変え、「情報」が主要な資本を形成する時代になっている。
それらに加えて強靱な情報力や知力を所有するともいえる生成AIが世界に大きな影響を与える時代が迫っている。これらの知力・情報力が主要な資本を形成する時代になりつつある。今やかつての資本に代わるものが「情報」になり、「アプリ」や「ソフトウェア」になった。地主がその土地から利益を上げた時代から、生産工場から利益を得る時代になり、お金が利益を上げる時代(金融資本主義)になった。これらの産業資本主義や金融資本主義の経済は今も重要であることに変わりないが、その中軸がデジタル情報資本主義に変わろうとしている。端的にいうと「デジタル情報」がお金を生み出す時代になったということだ。資本の在り方が根本的に変わったのである。
すでに生成AIが資本の一部を形成する時代になってきている。生成AIは資本だけではない。あらゆるものに大きな影響を与えている。同じ分量の金属等の原料でもハイテクを駆使して完成する製品とハイテクを使用していない製品とでは、その経済的価値も根本的に異なる。ハイテクは知力である。その知力を兼ね備えているのが生成AIだ。今日においても多くの機器にコンピューターが内蔵されている。それらのコンピューターも多くの生成AIに代わり、これまではコンピューターを内蔵していなかった分野の機器にも生成AIは内蔵されていく。人間の労働は肉体を多く使う労働であっても、100%知力を使わずにできる労働はほとんどない。その知力を使用する部分を生成AIが代替する時代が間もなくやってくる。それはあらゆるビジネスや労働にプラス面・マイナス面の大きな影響を与える。
北口 末広(近畿大学人権問題研究所 特任主任教授)