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【社会に出る学生のための人権入門】(第79回) チャットGPTがこれからの社会に与える影響⑪(2024/03/14)


 前回の連載原稿をふまえChatGPTに「ChatGPTがこれからの社会に与える影響ついて質問すると「ChatGPTは、高度な人工知能(AI)機能を備えたチャットボットで、エッセイや電子メール、詩の作成、コードの記述とデバッグ、さらには試験への合格など、さまざまなタスクを完全に単独で実行できます。 ChatGPTは、教育やビジネスなどの分野に影響を与えています。ChatGPTによって期待や慣習に変化が生じている分野としては、コーディングなどのスキルを必要とする専門分野だけでなく、教育分野もあります」と回答してくれた。

 私も大学における教育・研究者として、教育分野に与える影響は極めて大きいと指摘できる。高度な専門的能力があるなら、人間が特定のスキルを習得する必要がないのではないかという人びとも少なからずいる。私が講演でチャットGPTの翻訳能力の水準を紹介すると語学教育の必要性に疑問を抱く人びとは必ずいる。

 しかし問題はそう単純ではない。生成AIの翻訳を利用すれば90%以上の正確さで翻訳することができるだろう。それでも文学表現などの不充分さを是正するために文学作品の翻訳を専門とする翻訳家の仕事はまだまだ必要である。

 おそらくそんなに遠くない未来において生成AIは文学的表現も学んでいくだろう。翻訳と同じように知力面・情報面での活躍は急速に進化していく。こうした進化は自ら文学作品を創造することにつながっている。すでに私たちが的確な条件をプロンプトに挿入すれば短い小説を書き上げる。まだまだ人間の作家が執筆する小説にはかなわないが、いずれ人間作家に並び追い越す時代がやって来るだろう。あるいはそうした小説や政治的文章が人間の心を揺さぶり、世論形成や政治的判断に大きな影響を与える時代が来るかも知れない。

 そのような時代になれば本連載で述べてきたように意思や意志をもたないChatGPTが人間の意思や意志に大きな影響を与えることになる。すでにChatGPTは、米国において架空の判例まで創り上げている。そうした判例が実際の裁判に影響を与えることになれば社会は根底から崩壊していく。

 政治や選挙に関わってはフェイク情報が大きな悪影響を与えることは読者のみなさんもご存じだろう。こうした悪影響はビジネスや仕事の分野でも始まっている。とりわけ生成AIは高度な専門知識を必要する専門職ほど大きな影響を与えるだろう。

 本連載のテーマでもある「社会に出る学生」の皆さんに就職活動においてChatGPTがこれからの社会に与える仕事と人権への影響を十分に考えていただきたいと思う。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 特任主任教授)


     

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