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【社会に出る学生のための人権入門】(第84回) チャットGPTがこれからの社会に与える影響⑯(2024/08/08)


 前回に引き続いて生成AIがこれからの社会に与える影響について考えていきたい。生成AIはビジネスや労働面だけでなくすべてのジャンルに大きな影響を与えていく。

 力学でいえばテコの原理を説いたアルキメデスの「我に支点を与えよ。ならば地球も動かさん」との言葉が残されているが、それと同じことが情報面で起こるということだ。

 テコの原理とは読者の皆さんもご存じのように「力点」「支点」「作用点」があり、力点と作用点の間に支点が存在し、その支点を作用点に近づけていけば行くほど小さな力で大きな力を作用点で生み出せるということだ。力点と支点の距離をより長くし支点と作用点の距離をより短くすれば限りなく大きな力を作用点で生み出せる原理である。これは力学分野の原理だ。

 同様のことが情報面で起こる可能性を秘めているのが生成AIだ。アルキメデス風にいえば「我に生成AIを与えよ。ならば国際社会も動かさん」といったようなことだ。それも生成AIは日進月歩で進化している。優秀な人間の能力を超えることもそんなに遠くない未来だろう。それらを一部具現化しているのがGAFAMに代表されるプラットフォーム型企業だ。こうした企業はインターネットとスマホ等を駆使して莫大な冨を動かし、世界中の人びとを顧客に取り込んでいる。そしてこれらの企業が生成AIの能力を付け加えて新たなビジネスモデルを構築し世界を動かそうとしている。20世紀は大手マスコミが各国の世論を動かしたが、今やグーグルの傘下にあるユーチューブやメタ(旧フェイスブック)、X(旧ツイッター)等が世界中の世論に大きな影響力を有している。これに進化する生成AIが駆使されれば、その影響力はテコの原理を遙かに凌ぐものとなるだろう。アルキメデスが比喩的に言った「地球も動かさん」といったことが可能になるということだ。実際にはテコの原理で地球を動かすことは不可能だが、生成AIの進化はそれを可能にするだろう。この生成AIの進化形が独裁的な人間に悪用されれば世界は地獄への道に向かうだろう。しかしそれを制御する国際的な素晴らしいルールが確立されれば世界はより良い方向へ加速する。その中心的な役割を果たすのは、科学者とビジネスリーダーと政治リーダーだ。そうしたリーダーの玉子が今の就活生だ。是非、生成AIがこれからの社会にどのような影響を与えるかに強い関心を持っていただきたい。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 特任主任教授)


     

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