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【社会に出る学生のための人権入門】(第94回) SNSが与える社会への影響と人権⑤(2025/06/12)


 前回までSNSが社会に与える重大な影響について述べてきた。つまりSNS上を流れる膨大な情報に私たちは大きな影響を受けているということを明らかにしてきた。

 これまでの既存メディアとの違いの重大な一つは、SNS上にはフェイクが圧倒的に多いことだ。既存メディアにも誤報は少なからず存在するが、SNS上の情報と異なってテレビや新聞は内部のチェックを経た上で報道される。しかしSNS上の情報は多くの場合、チェックを受けておらず、多種多様な意図をもって動画をはじめ多くの情報が無尽蔵にアップされている。こうした情報やフェイクに多くの人びとは翻弄されている。それは就職活動をしている若者も同じだ。高学歴であっても情報リテラシーは決して高くない。近年になって高校までに情報リテラシー教育を受けてきた大学生も一定数いるが、未だ少数派である。情報リテラシーを受けてきても、その教育時間は極めて限られたものである。情報リテラシーが正式の科目にもなっていない。

 私たちはなぜ国語や数学、理科、社会等を学ぶのか。それは社会全体を理解するための情報リテラシーを学ぶという側面を持っている。数学を学ばなければ数字で表わされたグラフや表、統計数字を読み取れない。また理科を学んで一定の自然科学に関する知識を身につけなければ自然現象を正確に読み取れない。社会も同じだ。社会の仕組みやルールを学ばなければ社会現象の本質は理解できない。学校等で学ぶ内容は教科に分かれているが、ある面では多くの分野に対するリテラシーを高めるために学んでいるといえる。まさに社会を理解し生きていくために多様な教科を学んでいるのである。

 子どもは教科で学ぶが、大人は課題や問題を解決するために学ぶ。そのために多くの情報を収集し分析し発信している。子どもの頃に比較して体系的に人から学ぶことは減少する。成人してからは多種多様な情報を収集し自己学習している。とりわけ時代認識を高めるために多くの情報を吸収している。その情報収集の媒体・手段は今日においてはスマートフォンが主流になっている。つまりSNS上の情報が大人の情報収集に欠かせないものになっている。そのSNSは先に述べたように既存メディアに比較してフェイクも多い。それは日常的に誤った情報やウソの情報と接しているということだ。端的に言えばウソの情報(教材)から学んでいるということである。間違った現実把握は誤った方針につながる。非常にやっかいなことに大人になる前の青少年の時期からSNS上の情報にどっぷりと浸かっている。それは大人になってからの情報収集の仕方にも絶大な影響を与える。だからこそ情報リテラシーの重要性を深く認識する必要がある。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 特任主任教授)



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