
本連載で情報リテラシーついて執筆したことがあった。それらをふまえて「第五の権力」といわれるまでに大きな影響力を持つようになったSNS情報への情報リテラシーについて考えてみたい。そのためにもまずSNSの情報拡散の特徴を分析しておく必要がある。
SNSの情報は、情報拡散過程で単純化・平準化され一部分だけが強調されることが多く、情報の重要な細部が切り取られていく傾向が顕著だ。さらに強調化されたところだけがさらに拡大され複雑な議論はなくなっていくことが多い。そうした情報拡散過程によって社会が分断され冷静な議論が不可能になり、集団極性化現象が一層進むことになってしまう。こうしたSNSの特徴を冷静に把握しない限りSNS上の情報を正確に捉えることはできない。
既存メディアもこうした傾向に大きな影響を受けている。ある意味では既存メディアとSNSが相互に影響を受けながら世論が形成されつつあると言っても過言ではない。これらの情報環境の変化が知識層にも一定の影響を与えるようになってきている。世論や視聴者への迎合がさらに促進され、時代が大衆迎合へ進み、言論空間や民主主義の劣化が助長されつつある。政治家によっては自身の気に入らない情報をフェイクと決めつけることが米国等では日常的に行われるようになってきている。多様な議論ができない状況になるだけではなく、不寛容や排除が横行しフィルターバブルがさらに助長されるような時代的雰囲気になっている。これらの傾向にプラスして情報収集は情報伝達欲求につながることによって、フェイクがさらに拡散されていく。①新しい情報を伝えたい欲求、②人に貢献したいという欲求、③認められたいという欲求、④不安感情を解消したいという欲求は、情報を拡散する重要なエネルギーになっている。さらに不安や興奮状態等による冷静さの欠如によって被情報操作性はさらに強まり驚異的なスピードで広まっていく。
一般的に流言・うわさ・デマが拡散する条件は、①重要であること、②関心が強いことである。関心が強く重要なことであるほど、流言やデマは発生しやすくなる。さらに③情報のあいまいさや不確かさが原因であることも多い。正確な情報が分からないことに流言やデマが発生しやすくなることは多くの歴史が証明している。また④不安心理の強度も大きな影響を与える。人々の不安心理が強いほどフェイク情報は発生し広がっていく。
上記の分析をふまえた上でSNS上のフェイクを見抜き、情報リテラシーを高める必要がある。
北口 末広(近畿大学人権問題研究所 特任主任教授)